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    掲載日:2026.04.02

    秘めた歴史を持つ釣り人の聖地・栃木県中禅寺湖

    奥日光の豊かな自然の中にたたずむ中禅寺湖は、近代日本の避暑地文化とともにトラウトフィッシングの舞台として発展してきました。歴史と自然が交差する湖は、今も季節ごとのマス釣りで釣り人を魅了し、グルメや立ち寄りスポットも豊富な旅行先としての魅力を備えています。

    日本の近代史が息づく釣りの湖

    栃木県の日光市にある中禅寺湖は、標高約1,269mの高所に広がる日本有数の山上湖です。男体山(なんたいさん)や華厳滝(けごんのたき)といった景勝地と一体となった湖は、奥日光を代表する自然スポットとして知られていますが、実は日本の近代史の中でも重要な役割を果たしてきました。

    湖の北側にそびえる霊峰・男体山と中禅寺湖

    日光は古くから山岳信仰の地として知られ、江戸時代には徳川家康を祀る日光東照宮の門前町として栄えました。一方で、明治期以降は自然環境の素晴らしさから、諸外国の外交官や日本の政財界人の避暑地として注目されるようになり、中禅寺湖の周辺も西洋風のホテルや別荘の建設が盛んに行われるようになります。

    そうした中、中禅寺湖は各界の名士が釣りを楽しむ場として注目されます。古来、男体山の噴火によってせき止められた中禅寺湖は、魚類が生息しない湖とされていたのですが、明治の近代化が始まるとマス類(トラウト)を主とした魚類の放流が試みられるようになり、イワナやビワマスといった国産の魚、さらにニジマスやカワマスと外国産の魚が放流されるようになります。

    澄んだ湖水には今も数多くのトラウトが泳ぐ

    マス類はフライフィッシングなどの欧米のレジャーフィッシングでも主要な釣りの対象魚であり、中禅寺湖は名士たちの釣りの舞台となります。「東京アングリング・アンド・カンツリー俱楽部」といった社交組織が結成され、そのクラブハウスが中禅寺湖畔に設置されました。しかし、戦争の進行とともにやがて閉鎖を余儀なくされ、華やかな歴史もやがて忘れ去られていきました。

    今も残る当時のマス釣りのようすを伝えるアルバム(日光金谷ホテル所蔵)

    新しい時代を迎えた中禅寺湖

    終戦からおよそ20年が経った1963年、中禅寺湖漁業協同組合が設立され、魚類の放流事業が再開されます。埋もれていた釣り場としての歴史にも少しずつ光が当たり始め、中禅寺湖は「釣り人の聖地」として新しい歩みを始めました。その後、東日本大震災の影響で釣りが一時中止されるといった苦難も乗り越え、現在は奥日光の豊かな自然の中で、季節ごとの変化を楽しみながら美しい魚を狙える場所となっています。

    冷水を好み大型化するレイクトラウトは中禅寺湖を代表する人気魚種

    中禅寺湖のマス釣りには陸からの釣りとボートからの釣りがあり、それぞれルールや期間が定められています。釣り解禁は岸釣りが4/1~9/19、船釣りが4/20〜9/19です。例年、春から初夏にかけては岸釣りの人気が高く、初夏から夏にかけて湖の水温が上がり、魚が徐々に沖の深場に出て行くと船釣り(ボート釣り)の人気が高くなります。釣れる魚は、ヒメマス、ニジマス、ブラウントラウト、ホンマス、レイクトラウトなど。ビワマスとサクラマスの交配種であるホンマスと、北米原産のレイクトラウトの2魚種は、全国でも中禅寺湖でしか釣れないマス類として特に人気があります。

    中禅寺湖漁協

    季節の進行に合わせて釣りを楽しむ

    岸釣りは湖の中に立ち込み回遊してくる魚を狙う

    標高の高い山上湖の中禅寺湖は、季節の進行に合わせて釣りの条件が大きく変化します。天気、気温、水温、エサとなる小魚や湖畔に生息する昆虫類の生育具合など、その要因はさまざまですが、だからこそ大自然の中で周囲の状況を読み解き、一尾の美しい魚と出会う醍醐味があります。

    4月

    4月の釣り解禁直後は、湖の水温がまだ低く、魚が比較的安定した水温を求めて深場に定位しやすい時期です。春の積雪に見舞われることもあり、湖岸からの釣りでは急深なブレイクラインや溶岩帯のエッジが重要なポイントになります。その一方で禁漁期間にルアーやフライを見ていなかった魚は警戒心が薄く釣りやすいというメリットもあります。

    遠投しやすく深い場所もさぐれる大型スプーンは中禅寺湖の定番ルアー

    ルアーはメタルジグやディープレンジを引けるシンキングミノー、ヘビーウエイトのスプーンなどが主力です。アクションの基本はスロー。リフト&フォールやボトム付近を意識した「ただ巻き」が効果的です。派手なアクションよりもしっかり狙ったレンジを通すことが釣果につながります。

    フライフィッシングで使うストリーマー。動きを含めたシルエットでエサの小魚を模している

    フライはマラブーやゾンカーといった生命感のあるストリーマーが定番になります。ラインはタイプ3からタイプ6程度のシンキングラインを使い、湖底やブレイクラインを意識したリトリーブが基本。リトリーブのスピードはあまり速くせず、フライが自然に泳ぐ時間を長く取ることがヒットにつながります。

    5月

    5月に入ると水温が上昇してエサとなる小魚の動きも活発化し、マス類も徐々にシャローエリア(浅い場所)に差してきます。特に朝夕の光量が少なく魚も警戒心を抱きにくい時間帯はヒットを得られるチャンス。日中も魚が回遊してくるタイミングを上手くとらえれば、十分に釣果を期待できます。

    ルアーは解禁時期に有効だったものに加えて、シンキングペンシルなどのレンジ調整がしやすいものが活躍します。それらも駆使して、朝夕はワンド内、岬周り、流れ込み付近など、地形変化のある場所をテンポよく探る釣りつつ、日中は再びディープに落ちる個体も多いため、時間帯ごとにアプローチを切り替えることが重要になります。

    5月は岸釣りのハイシーズン。活動的になった魚たちがルアーやフライに果敢にヒットしてくる

    フライは5月になるとユスリカや小型のカゲロウ類の羽化があり、条件が整えばライズが見られる日も増えてきます。全体としては引き続きストリーマーの釣りが主体になりますが、状況によりソフトハックルなどの小型のウエットフライを表層で引く釣りもチャンスがあります。

    白銀の砲弾のような魚体を持つホンマスもレイクトラウトと並び人気が高い

    また、5月になって気温が高くなってくると、湖畔に生息するハルゼミを意識した釣りも徐々に楽しめるようになり、駐車場から長い距離を歩いて浅瀬でハルゼミを食べる大型魚を狙う釣り人も増えます。その際は、ルアーもフライも湖面に落ちたハルゼミを意識したシケーダパターンを使います。

    周囲の静けさも中禅寺湖の魅力。水辺に立てば自然と対話しながら釣りに集中できる

    6月以降は気温も水温も一気に上がり、冷水を好む魚たちはより水深のある沖に出るようになるため、釣りはボートからねらうレイクトロウリングやハーリングが主体になります。その際のボートは湖畔に複数ある貸しボート店のものを利用します。

    日光ならではの自然スポットや社寺巡り

    中禅寺湖を訪れる魅力は、釣りだけではありません。周辺には、自然・歴史・文化を感じられる観光スポットが数多く点在しており、釣行をより豊かな旅にしてくれます。

    男体山の噴火によってせき止められた中禅寺湖が大谷川となって流れ出す場所が華厳滝

    代表的なスポットが華厳滝です。春は雪解け水によって水量が増し、迫力ある景観を楽しむことができます。また、湖畔にたたずむ日光二荒山神社中宮祠や中禅寺(立木観音)は、静かな時間を過ごすのに最適な場所。同じく湖畔にある英国大使館別荘記念公園なども日光の国際的な歴史を感じさせてくれます。そして、日光の中心部にある社寺群や鬼怒川温泉といった他の主要観光スポットへも、中禅寺湖から車で30分ほどでアクセスできます。

    東照宮、二荒山神社と並ぶ日光の「二社一寺」の日光山輪王寺

    日光名物の湯波など、地元グルメも見逃せません。「湯波」と表記される日光のゆばは、山岳信仰の地で育まれてきた精進料理の代表的な食材で、料理の脇役ではなく主役として扱われてきました。食べ応えがあり「含め煮」や「生湯波のさしみ」として提供されます。他にも美味しいパン屋、そば店、川魚料理店、トンカツ店などが多くあり、人気店を探して食べ歩くのも楽しいでしょう。

    日光湯波の含め煮。日光は水のきれいさや豊富さも湯波の製造に向いている

    釣り場として唯一無二の歴史を持ちながら、周辺の自然、文化、食も体験することができる中禅寺湖。日光・奥日光エリアを代表する観光地には、これからも多くの方を迎え入れ、素晴らしい体験をさせてくれる懐の深さがあります。

    なお、中禅寺湖の釣り旅はこちらからもご覧いただけます。

    協力:つり人社

    • 記載の内容は2026年4月現在の情報です。変更となる場合があるのでご注意ください。

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